軽減税率を誤って適用 不足分2%の処理は…?
2021/05/26
Q.私は食品と日用雑貨の販売業を営む個人事業者ですが、標準税率(10%)が適用される日用品(税抜価格10,000円)について誤って軽減税率(8%)を適用して10,800円(税込)で販売していたことが判明しました。お客様には、店内への貼り紙とチラシによりその旨お詫びをすることとしていますが、お客様に対し、2%の消費税を追加で請求することは事実上不可能であることから、消費税の申告に際しては、軽減税率(8%)により売上税額を計算して宜しいでしょうか。
A. ●取引の実態に応じて適正な適用税率を判定する
国税庁の公表資料《事業者の皆様へ(~区分経理から消費税申告書の作成まで~)令和元年11月国税庁(令和2年1月更新)》の8頁では、適用税率を誤った場合の処理方法として、「小売店などにおいて、買い手(顧客)に対して誤った税率に基づいて税込対価を計算したレシートを交付していた場合でも、「取引の事実」に基づく適正な税率で計算して申告する必要があります。」としたうえで、適正な税率(10%)により計算した場合の消費税相当額は、下記のように計算することとしています。
10,800 × 10 / 110 ≒ 981円
つまり、標準税率(10%)が適用される商品を誤って税込価格10,800円で販売した場合であっても、「10,800円の税込価格を10%の税込価格として計算(申告)しなさい」ということです。結果、適用税率を誤ったことにより増加した消費税相当額181円(981円-800円)は、事業者が身銭を切って負担することとなるようです。
●軽減税率対象品を標準税率で販売した場合
前記の国税庁資料には書かれていないのですが、軽減税率が適用される商品を誤って標準税率で販売した場合にも、8%税率で割り戻し計算をすることになるのでしょうか?
例えば、軽減税率が適用される商品(食品:税抜価格10,000円)に、誤って標準税率(10%)を適用して11,000円(税込)で販売していた場合には、適正な税率(8%)により計算した場合の消費税相当額は、下記のように計算するものと思われます。
11,000 × 8 / 108 ≒ 814円
結果、適用税率を誤ったことにより減少した消費税相当額186円(1,000円-814円)は、事業者が不当利得として収受することになります。
適用税率を誤って不当に消費税相当額を収受した場合には、まずはお客様に対して店内への貼り紙やホームページなどによりその旨お詫びをするとともに、レシートなどを持参したお客様に対しては、2%の消費税相当額を返金することが必要となります。それが、商取引のいわば常識です。
国税庁の資料には、正しい税率による精算という商取引の常識については何も書かれていませんので、事業者に対していらぬ誤解を与える要因になるのではないかと危惧しています。
●軽減税率対象品を標準税率で購入した場合
国税庁資料の10頁では、「誤った税率に基づいて税込対価を計算したレシートを受領した場合には、取引先に対して「取引の事実」に基づくレシートの再交付を依頼するといった対応が必要となります。」としたうえで、適用税率の誤りによる税込対価の額の誤りについては「追記」を認めないこととしています。
適用税率が誤っている場合には、そもそもが区分記載請求書等の記載要件を満たさないこととなるので、買い手側としてはレシートの再発行を受けない限り、仕入税額控除は認められないことになるようです。